暮れも押し詰まっての演奏会でしたが、ご招待を頂いたので、有難く行って来ました。場所は神奈川県立音楽堂。大きくはないですが木材を多く使ったホール。自然の美しい響きが特徴です。
神奈川県青少年交響楽団は約60年の歴史があるそうです。現在は年少の学童生徒は少なめで、ОB・ОGが主体となって演奏をしています。従って以前に比べ格段に腕が上がったように感じます。指揮者の方の指導もあるようで、細部にも行き届いた端正なスタイルを築き上げています。
それでも今回、特に驚いたのが幼い(小学5年生の女児)テンパニー奏者で、抜群のタイミングとテンポ感覚を表していました。新世界交響楽(ドボルザーク作曲)のきびきびとした快演。圧倒的な盛り上がり、大爆発のエンディング(結尾)、全てはこの幼いティンパニー奏者の下支えによるものでした。二本ずつの二種のスティック(枹・ばち、フェルト部分の大小による二種のばち)を駆使し、鋭い打撃(フェルトの小さい方)とソフトなトレモロ(大きいフェルトのもの)の硬軟両方を見事に使い分けていました。終演後、私はこのティンパニー奏者にブラボーを贈りました。勿論心の中でね…。そして客席より手を振りました。何時までも何時までも… 愛らしいティンパニー奏者は頓狂なお顔で大喝采に応えていました。
演奏曲目
@ボアエルデュ作曲
歌劇「バグダッドの太守」序曲
Aバッハ作曲アベルト編曲
「プレリュードとフーガ」
Bヨハン・シュトラウス作曲
ワルツ「南国の薔薇」ОP388
Cドボルザーク作曲
交響曲第9番ホ短調「新世界より」ОP95
「バグダットの太守」は素人に毛が生えたような幼稚な作曲の曲、記憶に残りませんでした。
バッハは素晴らしかったです。フーガはオルガン曲を管弦楽に編曲したもので、オルガンのペダル鍵盤(足鍵盤)のパートを金管楽器に置き換えて編曲したもので、その壮重なパッセージは、怒涛の如き響きを得て感動的でした。私の肌に戦慄が走りました。
ワルツ「南国の薔薇」は美しい名旋律の寄せ集め。何時果てるとも知れ無いような連綿とた甘いメロディーが流れ来たります。ウットリと聴き惚れる一時を持てました。
新世界交響曲は、ティンパニーの打撃によって初演当時(1993年秋)?の感動が蘇りました(1・3・4楽章)。あのアメリカ大陸で培ったドボルザークの熱狂が…。そして第2楽章の緩やかな「遠き山にも陽が落ちて」の郷愁が…。ドボルザークの粋と言えるこの2楽章のコールアングレイ(イングリッシュホルン)の旋律が…、静かなティンパニーのトレモロの漣に乗り、蘇りました…。この得も言われぬ美音が、多くの聴き手を歓喜に導きました。