2018年08月22日

ブラームスの名曲11 クラリネット五重奏曲ロ短調Op115 2018.08.21

四つの交響曲、四つの協奏曲、ドイツレクイエム、数多の室内楽とピアノ曲、そして無数の歌曲、功成り名を遂げヨーロッパ楽壇の第一人者となったブラームスには名誉が押し寄せました。ブレスラウ大学から名誉博士の学位(1879年)、プロイセンから功労勲章(1887年)、オーストリア皇帝よりレオポルト勲章(1889年)、ハンブルク市からは名誉市民権(1889年)、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフから「芸術と科学に対する金の大勲章」(1895年)数々の栄誉が授与されました。

しかし、絶頂期を迎えたまでは良かったのですが、体調悪化も手伝い、ブラームスは第5交響曲執筆を断念、創作力の衰えを痛感しました。「歳を取り過ぎた、もう引退だ」と言い、余った草稿を破り捨て燃やしてしまい、遺書の執筆を始めました(1890年)。

ところがマイニンゲンオーケストラのクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトと知り合い(1891年)、その素晴らしいクラリネットの魅力に取り付かれたのでした。直ぐにその年の内に、ブラームスは2曲のクラリネット室内楽を作曲してしまいます。ブラームスとクラリネット、ここで運命的な出会いが始まったのでした。この後、ブラームスが死ぬまでに、都合4曲のクラリネット室内楽が産み出されたのです。ミュールフェルトが一番待ち望んでいたのがクラリネット協奏曲でしたが、残念ながらクラリネット協奏曲は無視されました。年老いたブラームスは己を知っていて無理をせず協奏曲は諦めて、飛び切りの室内楽の名曲を4曲を書くのでした。

ブラームスの創作力はクラリネットによって蘇りました。第5交響曲とクラリネット協奏曲は実現できませんでしたが、クラリネット室内楽の他に20曲に及ぶピアノ小品、ブラームスの遺言とも言える歌曲「四つの厳粛な歌」とオルガンのコラール前奏曲が生れたのです。ブラームス最後の傑作の噴出でした。

クラリネットの室内楽は4曲あります。最初がクラリネット三重奏曲イ短調Op114、次にクラリネット五重奏曲ロ短調Op115、そして3年後に二曲のクラリネットソナタ第1番ヘ短調Op120-1と第2番変ホ長調Op120-2が作曲されました。全てが名曲中の名曲ですが、一際優れて傑作なのがクラリネット五重奏曲ロ短調です。但し、最も深い内容を持つために、その表現は晦渋であり、聴き辛さが否めません。全体に暗い情緒が横溢しており、晴れる事の無い悲しみに沈んでいます。他の3曲は比較的聴き易く、遊び心も満載されているのですが…。

ある評論家がこれと同じ編成を持つモーツァルトのクラリネット五重奏との比較をしています。モーツァルトの方は晴れ晴れとした天上的な悲しみ、ブラームスの方は欝々とした地上的な悲しみ、ブラームスは余りにもリアリスティック(現実主義的)で、音楽の精神の浄化作用に欠けていると言いました。なるほど中っているなと感心しましたが、それは音楽の側面のほんの一部を証したもの、音楽は快楽的に浄化作用をするだけでは無いのです。唯単に人を気持ち良くするためだけに音楽があるのではありません。音楽と共に慟哭して知り得る音楽もあるのです。ブラームスは深く心に刻み付ける音楽、心が共感する音楽、そこにブラームスの精神の浄化作用があるのです。

第1楽章はロ短調のアレグロでソナタ形式6/8拍子、諦観に溢れていますが、闘争心もあります。曲全体を統率する第1主題と、それに呼吸を合わせ哀願するような第2主題で構成されています。明確な楽章で、ソナタ形式の粋が感じられます。

第2楽章はロ長調のアダージョで三部形式3/4拍子、ハンガリア風の情緒があります。悲しい郷愁に溢れていて、ブラームスの心の内の楽園は、こう言ったものかも知れません。しかし中間部は可なり異なります。クラリネットが巨匠風に活躍し、ジャポニスク(日本風)に影響を受けたブラームスのエキゾチシズム(異国情緒)が溢れます。このクラリネットの独奏はまるで日本の尺八を連想します。風雅と喧騒が重なり合い、エキサイティングな興奮が生み出されます。リアリストのブラームスとしてはエンターテインメントに擦り寄った数少ない楽句と言えます。

第3楽章はニ長調のアンダンティーノで間奏曲風、三部形式で4/4拍子。中間部のプレスト(2/4拍子)が主要部で、両端のアンダンティーノは、前奏と後奏の役目を果たしています。プレストは焦燥感があり、せかせかした印象もありますが、そのささくれをアンダンティーノの優しい歌が慰めてくれます。

第4楽章はロ短調コンモート(動きを持って)でヴァリエーション、2/4拍子。この楽章は最早人に聴かせる音楽からは逸脱しています。これはまるでブラームスの独白のよう…。自らで自らを慰める音楽、ロマン派ではなく近代の音楽…。
posted by 三上和伸 at 13:45| ブラームスの名曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

一日の初めに アベッグ台風西日本へ 2018.08.22

台風19号・20号が連続して西日本を襲っています。19号ソーリックは奄美諸島を抜け東シナ海にあり、今後朝鮮半島に向かうようです。20号シマロンは速度を上げて、四国から紀伊半島に上陸の見込みです。我らが住む関東地方には接近はしない見込みですが、仮に東寄りに進む場合は、勢力の強い台風の東側が関東に接近する可能性もあり、その場合は注意が必要と思われます。🌀シマロンは速度が速いので、24日午前に、あっと言う間に日本海へ抜けるでしょう。

仕事を持つ限り、台風には悩まされますね。直撃でしたら勿論仕事は休みとなりますが、何時もその判断に苦労をさせられています。まあ、今回は大丈夫そうです。

20号の名はシマロン、これはフィリピンの名付けで、野生の牛を意味します。19号はソーリックで酋長の意味、今度の20号は野牛ですと...。面白いですね。
posted by 三上和伸 at 09:12| 一日の初めに… | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする