ピアノアクションは、梃(テコ)の原理とそれによる円運動で作動しています。その運動の中心(支点)がセンターピンです。これがスムーズに動くことが、弾き易いピアノの条件です。センターピンが経年の変化で錆びたり、ブッシングクロス(フェルトを編んだもの)の過湿による膨満のため、この円運動が阻害されるのがステックです。ステックを解消するため、センターピンを交換するのです。
これがステックです。スプリングがバットフレンジを引っ張っているのですが、フレンジは動こうとしません。センターピンとブッシングクロスホールがステック(粘る)しているのです。これではハンマーが定位置に戻らず、鍵盤も戻りません。次の打鍵が出来なくなるのです。ハンマーバットではフレンジの1か所に一本のセンターピンが使われているので、これを新しいセンターピンに取り換えれば、ハンマーバットのステックは解消します。
ブッシングクロスホールに新しいセンターピンを入れて、キツさユルさを確かめます。
キツければ、リーマでホールを抉り(こじり)、丁度良いキツさユルさに調整します。ユルければ、センターピンの番手を上げて、再び調整をします。出来たらバットにフレンジを取り付けガタツキがないかを確かめ、余ったセンターピンをセンターピンカッターでカットします。右が出来上がり。
全部のセンターピンが取り替えられたら、ハンマーの整形をします。使われていたハンマーには弦の溝が掘れています。外したハンマーを再び取り付けるのに、この溝が邪魔するのです。ハンマーの弦当たりが不揃いになるので、必ずハンマーの溝は無くし、滑らかに成形します。