昨日(24日)に聴いた"とつかニューイヤーコンサート2020”に付いて一言説明致します。
ヴァイオリン・遠藤香奈子(東京都響第2ヴァイオリン主席)さんと妹さんのピアニスト・遠藤和歌子さんがデュオで演奏会をされました。妹さんの和歌子さんは、我が三上夏子の同門の矢波門下生で、夏子の先輩に当たります。またお姉さんの香奈子さんは、東京都響の第2ヴァイオリンで首席奏者を務めるヴァイオリニストです。昨年は2回ほど東京都響の演奏会(ブラームス第2、ブルックナー第7)を聴きに行きました。ステージのほぼ中央の指揮者の奥の第2ヴァイオリンの主席の席に陣取っていらっしゃいました。この席は客席の正面を向いており、そのお顔が小さいながらも良く観えました。
演奏はお二人のデュオが大半でしたが、ピアノが2曲、ヴァイオリンが1曲、ソロを弾かれました。正確なテクニック、柔かで美しい音色、見事な演奏が続きました。感動した2曲の説明を致します。
◎ピアノソロ ショパン 練習曲 「エオリアンハープ」作品25-1
リストの愛人のマリー・ダグー伯爵夫人に捧げられた曲です。マリー・ダグーはパリの有名なサロンの主催者。政治家や文化人が集う社交界の花形で、フランツ・リストと不倫をして、後に3人の子供(次女が後にワーグナーの妻になるコジマ)を産みます。このサロンの客及びピアノ演奏者としてショパンも出入りしていました。ショパンはここでジョルジュ・サンドと恋仲になり、4人は親しい間柄にありました。
アルペッジョ(分散和音)の上をソプラノの美しい旋律を歌わす名曲。シューマンに言わすと、このアルペッジョは「風が吹き鳴らすエオリアンハープのようだ」と…。またショパン本人が言うには、「この旋律は、嵐の日に洞窟に隠れた羊飼いが鳴らす笛のように弾いて欲しい」と…。エオリアンハープのアルペッジョの風に、羊飼いの笛が乗って…、それがこの曲の奥義であると、二人の音楽家は示唆しているのです。
◎ヴァイオリンソロ パガニーニ 「24のカプリス」より第24番
悪魔と称された超絶技巧を持つ伝説のヴァイオリニスト・パガニーニ(1782-1840、ロマン派初期)。少年の内に既存の練習曲を上回る技巧を獲得し、自分で多くの超絶技巧の練習曲を書いたと言い伝えられています。使用ヴァイオリンは、グァルネリ(バルトロメオ・ジュゼッペ・Wデル・ジェス”・アントニーオ・グァルネリ)の「イル・カノーネ」。最後はベートーヴェンと同じように、梅毒の治療に依る水銀中毒で、亡くなりました。
カプリスは日本語で奇想曲、10年を掛け、イタリア・ジェノバで書かれました。無伴奏なので、重音奏法や左手高音ピッチカートなどを用い、難曲中の難曲に仕上げました。
24番クワジ(殆ど)・プレストは最終曲で、イ短調2/4拍子、11の変奏曲と終曲で出来ています。後の作曲家に計り知れない影響を与え、この曲の主題で、リストに「パガニーニ練習曲」、ブラームスに「パガニーニの主題による変奏曲」、ラフマニノフに「パガニーニの主題による狂詩曲」を書かせています。ヴァイオリン曲ですが、ピアノ曲に影響を与えているのですね。