2008年06月21日

調律師の休日・自然通信

 夏至、それは一年の時の波動の最高潮を示す一日。ヨーロッパの国々では盛んに祝祭されていると聞きます。しかし日本ではこの時期、梅雨の真っ只中にあるため、それに確たる現実味を感じる日本人は少ないようです。また日本は比較的緯度の低い温帯の国なので、日照の長短等は、彼のヨーロッパ諸国に比べればさほど切実ではなく、むしろ梅雨明け後の強烈な太陽の方が良し悪しに関わらず関心があるようです。でも私はその名の力強い響きと共に、夏至の持つ隆盛極まる充実感が大好きで、毎年この日を私と同意見の上の娘と二人して祝い、共に悦に入っている次第です。(娘)「夏至だよねー!」。(私)「一年で一番昼が長いんだね…!」と。
 さて先程、夕方のニュースで明日の日曜日の天気情報を見ていたところ、明日は雨らしく明日予定してた霧が峰行きは中止にせざるを得なくなりました。実は私は、長野県の霧が峰に現れるある二種類の花の織り成す風景を題材に、自然通信を作る計画でした。この二つの花はこの梅雨の季節に相前後して咲き出す素晴らしい花であり、両者の満開が一致する日にちは極めて短く、その貴重なチャンスが今であると判断したからなのです。しかし、雨では侭成りません。本当に残念ですが今年は諦める事にしました。そして必ずや来年それを実現し、その驚嘆すべき美景を皆様にご覧に入れる事を約束したいと思います。まあ、来年の事を言えば鬼が笑うかもしれませんし、そんな事忘れてしまわれても一向に構いませんが、もし、ご期待下さって頂けるのなら、それまで気長にお待ち下さい。どうぞ楽しみにしていて下さい! でも本当に忘れてしまってもいいですからね?…。
 それで今回は、その代わりと言ってはこの花に可愛そうですが、腰痛の私を一生懸命励ましてくれた梅雨の花の一つ、愛するネジバナを紹介致します。これは五年前の号で、少年時代の私の思い出を語った一葉、自然通信21を送らせて頂きます。

 自然通信21 少年の日の思い出 捩花(ネジバナ) 横浜市 2003/06/16
ネジバナ
 写真は2008/06/19
 私が通った小学校は、小、中、高と続いている私立校で横須賀市の中心部の海沿いにあり、素晴らしい環境の下にありました。毎日、海を見ながら登下校をし、海の色や潮の匂いに四季の移ろいを感じながら通学していたように思います。当時の学校の前庭は広い芝地で校門から校舎まで一本の長い道が附けられていました。道の両側には花壇が続き立薔薇が植えられ、その先には白いアーチが架かっていて蔓薔薇が絡まっていました。今思えばこの学校には優れて庭師がいたに違いありません。芝生の庭園はなだらかな起伏が附けられており、そこには白いベンチが置かれ、東屋まであったような気がします。そこで高校生のカップルが午睡を楽しんでいるのをよく見かけ、男が女の膝にもたれている事もあって、級友の悪ガキ君は冷やかしていましたが、私は高校生になればあんな事もできるのかと少し憧れていました。
 放課後になると私達はよくここで遊びました。蝶を捕ったり蜻蛉を追いかけたり、蜂の一刺しに大泣きをして保健室に飛び込んだり、懐かしく思い起こせます。そしてこの季節、芝地の中はツンツン尖ったピンクの花が一面を覆い尽くし芝は桃色に霞んで見えました。一本摘んでよく見るとそれは沢山の小さな花が螺旋状に咲き上がって付いていて、何とも美しく楽しい草でした。かの理科好きの悪ガキ君はこう説明してくれました。「ほら、グルッと捩れているだろう、だからネジバナって言うんだ」。「なあるほど!螺子花(間違い、正しくは捩花)か…。」私は早合点をし、最近までその間違いを疑いませんでした。
 古い名は“もぢずり”で古の和歌にも詠われています。
 陸奥の 忍ぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに
posted by 三上和伸 at 21:40| 自然通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする