2009年11月23日

音楽の話9 NHKN響アワー、サンティ指揮N響のブラームス交響曲第一番を聴いて

 サンティはイタリアのオペラ指揮者でオペラの世界では極めて高い評価を勝ち得たマエストロです。ところが近年はコンサート活動にも熱心であり、日本ではN響を指揮してお馴染みとなりました。
 インタビューではヴェルディとブラームスを愛していると公然と述べ、その愛する根拠は二人の作曲家が共通して持っている論理性にあると主張しています。もちろんそれは私も同感ですが、二人の作曲家の美点は決して論理性だけではないでしょう。その論理に寄り添うように表れる豊かな人間性に最大の魅力があると思います。サンティは見たところ雄弁ですが舌足らずのようであり、本当はこの二人の作曲家の世の真理を見詰める深い人間性を愛しているのだと私は推察しました。

 またサンティはヴェルディのオペラ「ファルスタッフ」とブラームスの第一交響曲を引合いに出し、二人の天才ならオペラであろうがシンフォニーだろうが双方どちらでも同様の傑作が書けると珍説を述べていました。これはサンティが優れた音楽家ではあるが言葉は苦手であると言う事を証明しているように思われます。思っている事と言っている事が矛盾しています。ブラームスが「ファルスタッフ」のようなオペラを書ける訳はなく、同様にヴェルディがブラームスのような交響曲を書ける資質を持ち合せているとは思えないのです。ヴェルディもブラームスもジャンルは違うが同様の優れた内容(人間性に溢れた)を持つ音楽が作れるとサンティは言いたかったのでしょう…。

 サンティのブラームス交響曲第一番はよい演奏でした。愛するだけあってよく考えられ練り込まれた優れた出来栄えだったと思いました。まあ第二、第三楽章はややあっさりとして情緒がもの足りなく感じられもしましたが、第一楽章とフィナーレは力感に溢れて見事でした。特に愛の勝利を高らかに歌うフィナーレは曲が進むに連れて益々激しく力強さを増し圧倒的な感動をもたらしました。それは嵐の様な会場のブラボーコールがおざなりでなく高温の熱を帯びていた事に証明されるでしょう…。私も興奮で肌が粟立ちました。

 *ジュゼッペ・ヴェルディ(イタリア、1813〜1901)
 イタリアオペラ最高の作曲家、シェイクスピアの戯曲から題材を選んだ作品もあり人間の心理を劇的に描いた。「リゴレット」、「アイーダ」、「オテロ」、「ファルスタッフ」などオペラ作品多数、他にレクイエムなど

 *ヨハネス・ブラームス(ドイツ、1833〜1897)
 古典主義とロマン主義を結合し新たな音楽芸術を創造した。それにより二十世紀の現代音楽に道筋を示した。深い人間性に根ざした感動的な作品が多い。ドイツ3B(バッハ、ベ−トーヴェン、ブラームス)の一人。交響曲4曲、協奏曲4曲、室内楽曲、ピアノ曲、ドイツレクイエム、歌曲など多数

 以上を見てお解りのように、ヴェルディはオペラばかり、ブラームスはオペラは一曲も書いていません。サンティがいかに矛盾した考えを述べていたかがお分かりでしょう。
posted by 三上和伸 at 21:56| 今宵の名曲・音楽の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする