2010年02月08日

音楽の話14 NHKN響アワー、故スウィトナー・メモリアル

 N響の名誉指揮者であった旧東ドイツの指揮者オットマール・スウィトナーが亡くなったそうです。八十七歳だったそうで天寿を全うされたようです。しかしその現役引退は早く、まだ七十歳に届かぬ内の事だそうで、その原因はパーキンソン氏病の発病に依るのだそうです。番組中、生前のインタビューのビデオが流され、「手が震えるようになり、指揮棒が震えてはお終いだと思った。誰にでも何時かは終わりが来る、少し早いが引退は自分で決めた」と語っていました。その語り口は淡々としていましたが、やはり悲劇的であり、私は切なく心動かされるものがありました。
 
 番組では比較的若い時代の客演のウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲と晩年の名誉指揮者時代のブラームスの交響曲第三番へ長調が放送されました。
 ウェーバーは流石に若々しく颯爽として活動的な演奏でした。しかも決して格調の高さは失わず、ドイツ国民オペラの伝統の確かさを感じさせました。
 ブラームスの第三は稀にみる名演奏だったと思います。特に渋い色彩の第二楽章アンダンテや美しい旋律を持つ第三楽章ポコ・アレグレットの大人の音楽は素晴らしかった。強弱の意味深い付け方、息の長い微妙な歌い回し、ニュアンス、美しい和声の響き、大人の音楽のブラームスを大人のスウイトナーが演奏した第三、正に大人だけしか解らない格別の音楽でした。こんな演奏ができる大人の指揮者は現在いるのでしょうか? またこれから新たに現れるのでしょうか? それは甚だ疑問であると私には思えます。しかし現われてくれなければ困ります。そうでなければ昔のCDばかり聴かなくてはなりませんから…。音楽をもっと素晴らしく、意味深く、面白くしてくれなければ大人は詰まりませんよね! 

 最後にスウィトナーはブラームスの第三をこう語りました。「第三はブラームスの他の三曲の交響曲に比べ演奏される機会は一番少ない。それはこの曲がどの楽章も静かに終わるからだ。現代は喧噪の時代だ、だからこの静かな曲は人気が上がらないのだ。でも私はこの静かさを大切にしたい。できる限り取り上げたいと思っていた。」
 私も全く同感です。静かに消え入る音楽に込められた情け深い感情、それはパフォーマンスに明け暮れる今日までの芸術に対するアンチテーゼだと思います。皮肉屋ブラームスは当時の聴衆にこんな皮肉を込めて問うたのです。ところが当時この曲は人気絶大でありました。当時の人々は少し今と違い音楽をよく知っていたのかも知れませんね? この名指揮者スウィトナーのように…。スウィトナーは古き良き時代の精神を知る得難い指揮者だったのでした。
 
posted by 三上和伸 at 00:46| 今宵の名曲・音楽の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする