2011年05月23日

音楽の話44 ブラームスの歌曲「歌の調べのように」について 2011.05.23

先日、音楽の話42で取り上げたブラームスの歌曲の一曲、クラウス・グロートの詩による「歌の調べのように」について一言…。以下に志田麓氏の訳詩も載せてみました。ご参考までにどうぞ…。

歌の調べのように  クラウス・グロート・詩

歌の調べのように何かが
そっとわたしの心をよぎり、
春の花のように咲きでて、
花の香のように漂ってゆく。

けれども、言葉でそれを捉えて、
目の前に想い浮かべようとすれば、
灰色の霧さながらに色褪せて、
鏡面の息の曇りのように消える。

さりながら、詩歌のなかには
ある香気が秘められていよう、
それは、涙に濡れた眼がやさしく
静かにふくらむ蕾から誘う香りだ。   志田 麓・訳詩

 何とも仄かな恋心が詠われています。この詩を書いたクラウス・グロートはブラームスと同郷の詩人であり友人でもありました。共に集い、冗談を言い合ったりした気心の知れた友、しかも一人の若き女性を愛した恋敵?でもあったのです。その女性の名はヘルミーネ・シュピース、ビロードの歌声を持つ才気に富んだアルト歌手でした。二人は夜を徹してヘルミーネについて語り合い賛美し合いました。そんな夜、この詩は生まれたのです。直ぐにブラームスは詩に歌を付け一曲の歌曲に仕上げました。この詩、この歌、二人のヘルミーネに寄せる思いがピタリと寄り添った歌曲、こんなに優しく思い遣りの籠った歌曲は二つとないでしょう。美しい名歌です。

 さてヘルミーネはこの二人の内どちらを愛したでしょうか?、勿論ブラームスですよね。ヘルミーネはブラームスの求婚を待ち侘びていたと言われています。優柔不断、罪な男ですね、ブラームスは…。結局二人の恋は自然消滅となったのですが、この恋で多くの傑作歌曲が世に出たのです。勿論捧げられたのはヘルミーネ、レパートリー・財産としたヘルミーネは誇りと愛着を持ってこれらの歌曲を歌い続けたそうです。取り分けこの「歌の調べのように」はヘルミーネのテーマ、この曲こそは正にヘルミーネの生き写しのようだと謂われています。

posted by 三上和伸 at 23:24| 今宵の名曲・音楽の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする