2012年01月26日

生き物大好き19 皇帝ペンギンの秘密 フランス映画「皇帝ペンギン」を鑑賞して 2012.01.22

 この二十一日にBS日テレで観たフランスドキュメント映画「皇帝ペンギン」に、強く感動しました。それは皇帝ペンギンの夏の生活と冬の繁殖の記録で、一つがいのペンギン夫婦とその雛の一年を、興味深く丹念に物語仕立てにした名作でした。

 皇帝ペンギンは、南極だけに棲む大型のペンギンで、南極海の氷の下に生息する魚類を捕食し、生活をしています。陸ではヨチヨチ歩きのペンギンですが、海中では俊敏で、まるで空を飛ぶが如く泳ぎ回り、群れなす魚をいとも簡単に捕えます。ところでその胃袋は巨大らしく、大量の魚を呑み込んではペースト状に消化貯蔵する能力を保有し、氷上に於いては数カ月、何も食べないでやり過ごせる特異体質をしています。それは繁殖の季節に特に顕著化するもので、海から遠い氷上の谷で行われる繁殖・養育の期間は、雛(卵の時も)と過ごす“つがい”の内の一羽は、雪で水分を補給する以外、数か月、何も食わずに餌付をし雛を守ります。採食はつがいの交代制(各々一回)で行われ、一方が雛(卵)を抱いている間に、もう一方が海へ下り捕食し、大量の餌を胃袋に溜め、雛に持ち帰るのです。春の巣立ちまで、それをもう一交代繰り返します。こうしたやり方で、自分たち夫婦と雛の食を確保し賄うのです。

 秋、厖大な数の皇帝ペンギン(成鳥)は、繁殖のため海辺に集合します。そして隊列を組んで徒歩で行進し、海辺から遥かに遠い氷上の谷(盆地・雪原)に苦労の果てに辿り着きます。そこは皇帝ペンギンの生まれ故郷、安心して子育てが出来る、皇帝ペンギンには厳しくも安全な揺籃の地です。まずは、雄と雌が知りあって恋をし、つがいとなります。この時、少数派のオスを巡って多数派のメスたちがオス獲得を目指して争奪戦を行います。普通の生物に比べれはオスメス逆転ですが、数の論理と生活環境の厳しさからか、そうならざるを得ないようです。勝ったメスと目当てのオスはつがいとなり、すかさず交尾をしてメスは卵を産みます。巨大な卵はメスの腹の羽毛に包まれ足の上に置かれています。それをメスからオスに預け渡す儀式が皇帝ペンギンの子育てのやり方の第一歩です。何故ならここでの産卵で栄養を失った腹ペコのメスは自身と雛のために、オスに卵を預けて餌を捕りに海へ向かわなければならないからです。この卵の受け渡しは、子育ての内で最も厄介で危険な作業であると説明されていました。何故なら極寒のここでは、羽毛から出て裸になった卵は数秒で凍りついてしまい、中の命は断たれてしまうからです。この儀式を映画の中ではダンスと呼んでいましたが、手を使えぬ不器用なペンギンはオスメスが向かい合い、ダンスを踊るようにして足と嘴を使い、必死で卵を受け渡しします。メスの羽毛の腹からオスの羽毛の腹へ、ハラハラドキドキ踊って踊って、何とか卵を移し終えたのでした。しかし失敗したつがいもあり、卵は一瞬にして凍りつき破裂してしまいました。しくじった夫婦の落胆はいかばかりか、それは何時までも諦めきれずにそこに佇んでいる二羽の姿を見れば、自ずと解ろうというものです。

 そしてメスが海へ去った雪原は、やがて厳冬となり激しいブリザードが卵を抱えたオスたちに襲いかかるようになります。オスたちは列を作って円を描き、交代しながら猿団子となり、押しくら饅頭をしながら賢く卵と我が身を守るのです。そうこうしている内に、春の兆しがみえはじめた頃、卵は孵化し、愛らしい幼鳥が生まれました。オスの腹の羽毛から顔を出すベビー、何と愛らしい黒白の顔形、そして玉を転がすような声、ペンギンの生まれたての赤ちゃんを初めて見た感動は、喩えようのないものでした。方々至る所で出産ラッシュとなり、玉の声が響き渡っていました。

 それから暫くすると、メスはやっとの事でこの育児の谷に戻り、数多のオスの中から迷う事無く、己のつれあいを見分けます。そして卵から産れ出た我が子と、感動の初対面を果たすのです。その喜びは限りないようであり、オスの腹下の我が子を間にして、二羽は体を触れ合いもたれ合い、深い安堵と喜びに浸っているようでした。メスは胃に蓄えた大量の水溶化した餌を少しづつ雛に与えました。そして空腹の限界であったオスは雛をメスに託し喜び勇んで、海への旅に出、数ヵ月後、再び雛への餌やりに戻るのでした。オスは、メスから離れて遊んでいた雛であっても、雛の鳴き声を驚くなかれ憶えていて、無数にいる雛の中から声を頼りに我が子を見付け出しました。何と言う不思議! 何と言う愛着! 野生の卓越した能力に驚くだけでした。

 そして別れの時は来ました。オスとメス、この先お互いが生き残れたとしたならば、秋に再び夫婦になろうと誓い合っての別れだと言う事でした。残されたオスは、胃の餌を元手に暫くは子育てに励み、春の来訪と共に海へ下りました。そして独り立ちをした雛たちは、親たちと同じように隊列を組んで、初めての海へ向かうのでした。

 誰が好んでこんな過酷な生活をするのか、初めは甚だ疑問を持ちましたが、物語るに従い、成る程こう言う生き方もあるのだな…と、そして皇帝ペンギンにとっては、この生き方こそが最良であり、これしかなかったのだな…と、痛感しました。何よりもその逆境に耐えうる忍耐の夫婦愛…、努力の果ての親子愛…、素晴らしい…。されど感動も然る事ながら、人間として生き物として、学ぶべき所の多い事に驚きました。夫婦が仲良く助け合えば、子は元気に巣立つ。人間もペンギンに負けてはいられません。
posted by 三上和伸 at 22:05| 生き物大好き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする