2012年10月04日

音楽の話86 東京駅リニューアルデビューのCM音楽はマラ5のアダージェット 2012.10.4

 先日、昔日の東京大空襲で焼失した三階部分と立派なドームが修復され、リニューアルされた東京駅が開業しました。巷の話題になっており、私が映像を観る限りでは、それは素晴らしい懐古の趣きがあり、良いものに感じました。しかもそれに先んじて放映されていたTVCMが秀逸であったので、これが私を始め多くの人々の瞠目を集め、話題沸騰の呼び水となり結果に繋がったと確信しました。それは勿論、映像の威力も確かでしたが、それにも益して背後に使われた音楽の選定が的確でした。映像と音楽が見事に合致し最高の効果を上げました。関係者の積年の思いが籠められた東京駅駅舎、その懐古の情が、これまた懐古の憧憬で溢れんばかりの音楽にしっかりと溶け合っています。もう何も要りません、ただただ酔い痴れそこに佇み、涙するだけです。ああ、昔は良かったなー、多くの孤独な魂が母の胸に帰れたのです。

 使われたのは、近代オーストリアのシンフォニー作曲家・グスタフ・マーラーの交響曲第5番嬰ハ短調の第4楽章アダージェットです。アダージェットと言えばマーラー、マーラーと言えばアダージェット、映画「ベニスに死す」で使われたマーラーの小さな分身のような緩叙楽章です。第5は出来栄えとしては全体的に今一つで、傑作とは言い難い作品ですが、このアダージェットだけは天から降りて来た産物です。近代世紀末の孤独、焦燥、不安、恐怖、それらに苛まれていたマーラーだからこそ書ける音楽、強い懐古の情と深い慰安が横溢しています。ハープのオブリガート(序奏)で綴る弦楽の宴は余りにも美しく、正に天から降りて来た妙なる調べです。

 ベートーヴェンの第9・第3楽章、ブルックナーの第8・第3楽章に並ぶ、最も美しいシンフォニーの緩叙楽章で、ビューティフルシンフォニーのビッグ3です。
posted by 三上和伸 at 16:49| 今宵の名曲・音楽の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする