2014年01月13日

音楽の話103 ドコモ・海のCM音楽はブラームスのハイドンの主題による変奏曲 2014.01.13

 広く大きな海原の映像が映し出され、それに寄り添うように、ゆったりとした音楽が流れます。海と音楽でドコモ携帯の何処までも繋がるをイメージした気持ちのよいCM作品ですが、この音楽こそが管弦楽用変奏曲の傑作・ブラームスのハイドンの主題による変奏曲Op56aです。伴奏に乗って冒頭のオーボエの美しい主題の旋律が奏でられますが、一般に解り易いのはここまでで、以下に続く9つの変奏部分は渋く難解です。されどこの難解な部分こそがブラームスの真骨頂であり、ある指揮者の言に依ると「ここに人生の全てがある」だそうで、その傑作の真価を証明しています。まあ、ブラームスとは聴衆の理解力を無視した曲作りをしたり、人目を引いて受けを狙う姑息なパフォーマンスを嫌ったりした稀有の作曲家であったと言う事実が、このハイドンの主題による変奏曲でも垣間見られます。最も聴衆に受けるのが、このハイドンの主題の部分であり、以下の変奏曲は初心者にはチンプンカンプンなのです。それでも、第6変奏の隆々たるダイナミクス(活動性)や第7変奏の愛の歌などは比較的解り易く、その素晴らしさの片鱗を感知する事が出来ます。

 この美しい主題は、ハイドンの“野外音楽のためのフェルトパルティ−エン”と名付けられた曲集の中にあり、ハイドンはこの主題に“聖アントニーのコラール”と名付けました。ブラームスもそれを踏襲してこの名を用いましたが、現代では「聖アントニーのコラール」は省かれて、ハイドンの主題による変奏曲で名が通っています。ところで何故どうしてどうやって、ブラームスがこの主題を見付けたか?、その経緯とは?…。それは当時仲の良かったハイドン研究家(音楽学者)のフェルディナント・ポールと二人してウィーン楽友協会等のハイドンの資料を漁り、ハイドンを徹底的に研究していたからだと言われています。そしてその副産物として、この変奏曲は生まれたのでした。

 その研究の最中、ブラームスの目に留まったのがこの美しい旋律を持つこの主題でした。ブラームスはシメシメとほくそ笑み、「これは何かの役に立ちそうだな」と呟いたとか?。直にこの主題を使い、初めは2台のピアノのための変奏曲として作曲し、すぐさま管弦楽用に昨曲(編曲)し直しました。このため、作品番号としては、最終目的であった管弦楽用を56aに、試験的な2台ピアノ用を56bに定めました。ブラームスのハイドン研究は、学究が目的のF・ポールとは一線を画し、全てが己の創作の礎とするためにありました。従ってブラームスには言葉による創作(研究論文)は皆無(無関心)なのでした。されどブラームスは学者以上の理解力を示したと言われ、学者連中からは深く尊敬されていたようです。当然ですよね、それを礎に遥かに素晴らしい新作をものにしてしまう実力者だったのですからね。

 因みに、この主題・聖アントニーのコラールはハイドンの真作では無いらしく、当時歌われていた巡礼の歌ではないかとされています。
posted by 三上和伸 at 23:25| 今宵の名曲・音楽の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする