2015年03月31日

音楽夜話5 美し過ぎる歌曲ブラームスの「わが妃よ、そなたはなんと・・・」 ダウマー詩

わが妃よ、やさしい慈愛によって
そなたはなんと歓びに満ちていることよ!
さあ、ほほえみたまえ、すると春風が
わが心を吹きぬける、歓びに満ちて!

さわやかに咲きでたばらの花の輝きを
そなたの顔の輝きとくらべてみようか。
ああ、咲き誇るすべての花々にもまして、
そのたの花のかんばせは歓びに満ちて!

荒涼たる枯野を通って逍遥したまえ!
すると緑の木陰が一面に拡がる、
たとえそこがたえがたい重苦しさに
いつも包まれていても、歓びに満ちて!

そなたの腕で息絶えることを許したまえ!
たとえはげしい断末魔の苦痛が胸の中を
掻きむしったとしても、死ぬことさえ
そなたのかいなの中では、歓びに満ちて!
            訳詩:志田麓氏
注:かんばせ⇒顔 逍遥⇒彷徨い歩く

お気に入りの詩人・ダウマーのペルシャ風の詩に曲を付けたもの。どうやらブラームスはエキゾチシズム(異国趣味)を多分に持っていた作曲家だったようです。その線で言えばダウマー愛好は当然の帰結、ブラームスは好んで東洋趣味のダウマーの詩に曲を付けました。

「わが妃よ、そなたはなんと・・・」は、ブラームスの歌曲としては官能的且つ耽美的で、何ともエロティシズムに溢れた美しい曲です。どちらかと言わずともブラームスの音楽には禁欲的傾向が強いのですが、これは特別の例外…、ピアノも歌も余りに蠱惑的で美しい…。これには偏に一人の若く美しい女性の影響があると言えます。その名はエリザベート・フォン・シュトックハウゼン、ブラームスのピアノの弟子でした。ところがブラームスはこの16歳の娘の美しさに恐れをなし、この弟子を友人のピアニストに譲ってしまったのです。でもこの曲を聴けばその気持ちが判りますよね。大志を抱いていたブラームスはこの娘の所為でふぬけにはなりたくなかったのです。

エリザベートは第一シンフォニーの良き最初の理解者になったとか…、クララ・シューマンなんかよりもずっと早く…。音楽芸術の優れた理解力の持ち主だったそうです。
posted by 三上和伸 at 22:45| 音楽夜話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする