2016年11月21日

ブラームスの名曲4 歌曲「すぐ来てね」op97-5 2016.11.21

ブラームスの歌曲は、彼の生涯の全ての年代に亘って作曲されています。正にブラームスの自家薬籠中の産物だと言う事が出来ます。交響曲作家として大成し、見事なピアノ曲や室内楽曲も数多残しましたが、歌曲ほどの日常性は無かったと思われます。歌曲はブラームスの粋です。

日常的に、常に歌曲に関心を持っていましたが、その創作意欲が最高潮に達した瞬間は、やはりその陰に女性、主に女性歌手が存在した時でした。その愛する女性の名を列記すれば、その歌曲がどのように作曲されたか、大方の見当が付くものと思われます。それぞれの時代のブラームスの傍にいた女性歌手達です。

◎アガーテ・フォン・ジーボルト 関与曲:エアリアンハープに寄せて

*ベルタ・ポルプスキー(後結婚でファーバー) 関与曲:揺り籠の歌(ブラームスの子守唄)

*アマーリエ・バイス(既婚) 関与曲:アルトラプソディー

◎ユーリエ・シューマン(シューマンの三女、歌手で無い) 関与曲:ワルツ愛の歌、合唱曲「アルトラプソディー」

◎マリーエ・ルイーズ・ドゥストマン(ウィーン宮廷歌劇場歌手、ブラームスのウィーン進出を勧めた人)

◎エリザベート・フォン・シュトックハウゼン(歌手で無い) 関与曲:如何におわす我が女王

◎オッテリーエ・ハウアー

◎ヘルミーネ・シュピース 関与曲:歌の調べのように、まどろみはいよいよ浅く、他多数

*マリア・フェリンガー(既婚)

◎アリーチェ・バルビ(29歳差、当時31歳、ブラームスが60歳)

などの女性歌手が上げられます。この内、亭主持ちも何人かいますから、◎印が恋愛の対象と言えます。特に熱烈だったのが、アガーテ・フォン・ジーボルトとヘルミーネ・シュピースです。

アガーテ・フォン・ジーボルトは婚約者でありながら、後に婚約解消をします。アガーテは素晴らしいソプラノの持ち主…。クララ・シューマンを諦めて最初の恋。

そしてヘルミーネ・シュピースとの恋は、結ばれる寸前まで行くのですが、何故か自然消滅をしています。まあ、歳の差が26歳ありましたから、自然消滅は仕方がないと言えば仕方がない…、されどヘルミーネはずっとブラームスの求婚を待っていたそうです。ブラームスの優柔不断が災いしています。されどされど、それで良かったとブラームスファンは思いますでしょう。幸せ過ぎて腑抜けになり、その後の大傑作は生まれなかったかも知れませんでしたからね。

今日は、ヘルミーネを思いながら、友人の詩人・クラウス・グロートと作った「すぐ来てね」を紹介します。

ある日ブラームスとグロートはお茶(お酒?)を飲みながら、愛しいヘルミーネの話をしていました。ヘルミーネに出会って間もない二人は、共にヘルミーネにぞっこんで、賛美の言葉を並べ立てなければ居ても立ってもいられませんでした。そんな折、興が乗ったグロートはヘルミーネの言葉の仕草を真似て、一節の詩を認めました。それをブラームスに見せると、今度はブラームスが五線譜を取り出して、その詩にすらすらと曲を付けました。そこで出来上がったのが、この愛らしい「すぐ来てね」でした。ピアノに向かいブラームスが歌ったかどうかは定かでありませんが、恐らく私は歌ったと確信しています。ヘルミーネの美しい仕草に、熱い思いを籠めて…


  すぐ来てね 詩:クラウス・グロート op97-5

いったいなぜ毎日
待っているのかしら
庭の中では
百花繚乱の美しさよ。

ここに来て、美しく咲く花を
かぞえるのは誰でしょう。
花を眺める人は
ほとんどいないようなの。

わたしの親しい人たちは
藪から林へとそぞろ歩き、
わたしは、ほかの人たちも
夢見心地だろうと思うの。

わたしに誠意を示した
親しい人たちの中に
あなたがいてくださると
嬉しいのだけど!         訳詩:志田麓さん

慎ましくもやや滑稽なピアノ伴奏、それでも「すぐ来てね」と歌い出す歌は色に溢れていて麗しい乙女の香り、思わず微笑んでしまう初心な曲。

posted by 三上和伸 at 22:22| ブラームスの名曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする