Op.116ファンタジアの個性極まる作品群に比べれば、インテルメッツォと題されたこのOp.117は、比較的なだらかな大人しい曲集です。全20曲あるピアノ小品群の中でも、特異な存在です。一休みと言ったら良いのか、寛げると言ったらよいのか、多少の脱力感がある曲目です。情熱の躍動では無く、寂寥の沈潜、穏やかな曲たちです。
第1曲 アンダンテ・モデラート 変ホ長調
曲の冒頭には、ヘルダーの詩が掲げられています。「やすらかに眠れわが子よ、やすらかに、私はおまえが泣くのを見るのが辛い…」。静けさの中に融けこんでしまうような子守り歌。第1部は明るく希望があり、優しく赤子をあやしている風情です。されど中間部では、深い闇が訪れ、悲しみに沈みます。それは昔を偲ぶように…欝々と…。しかし第3部では再び、優しい子守り歌が聴こえ、元の安らぎが戻ります。
第2曲 アンダンテ・ノン・トロッポ・エ・コン・モルタ・エスプレッシオーネ 変ロ短調
枯葉が舞うような軽いエレジー(悲歌)です。形式的には凝っていて、ソナタ形式風です。渋いですが、ピアノを美しく響かせます。ブラームスにしてはお洒落な曲です。
第3曲 アンダンテ・コン・モート 嬰ハ短調
神秘的な暗いで出しです。空気が重く、覆い被さるようです。ブツブツと独白をしているようでもあります。中間部は明るく変化し、軽い踊りを踊るようで洒脱です。経過句を過ぎ、第3部で再び暗い空気が覆います。哀惜の情が、寂寥感を籠めて謳われます。
ブラームスとしては比較的柔らかい音楽で、肩の凝りがありません。バックグラウンドミュージックとしても、役立ちます。
ピアノ演奏
@ジュリアス・カッチェン
Aウィルヘルム・ケンプ
Bエレーヌ・グリモー
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