2020年05月12日

ブラームスの名曲37 歌曲「なんととび起きたことか」 Op.32-1

それまでも良い歌曲作品を書いて来たブラームスでしたが、到頭この作品32に至って、ブラームスの歌曲作品の真の傑作が生まれました。これによってシューベルト・シューマンの歌曲と並び果せる事が出来たのでした。詩人プラーテンとダウマーの詩に付けた作品32の歌曲9曲は、ドイツ歌曲史の一つの頂点となりました。この歌曲集のそれぞれの曲には、題名がありません。詩の最初の一句を題名にしています。

「なんととび起きたことか」 詩・アウグスト・プラーテン
真夜中になんととび起きたことか、
そしてぼくは先へと惹かれるのを感じた、
夜番に見守られながら、ぼくは路地を去り、
深更にゴシック風のアーチの城門を
そっとくぐり抜けて、町の外へ出て行った。

水車の懸かった小川が峡谷の岩棚からほとばしり、
ぼくは橋から身をのりだして、
遥か下の川波を注意して眺めると、
波は夜の谷でゆるやかにうねってゆくが、
どれひとつとして返ってくる波はない。

空には無数の星が瞬きながら運行し、
天体の音楽を奏でているようだ。
星たちとともに月も穏やかな光をはなって、
測り知れぬほど遠い彼方の
夜空で星たちはキラキラ光っている。

ぼくは夜空を見上げてから、
あらためて地上を見下ろした。
おお、情けない、おまえは日々をどう過ごしたのか、
この夜半に、おまえのときめく胸の中の
後悔の念をそっと鎮めるがいい!

夜中にふっと目覚め、飛び起きて町の外へ、恋に悩む男の呟き、女々しいですが深刻さが溢れます。まるでピアノ曲のような伴奏と、切ない歌、付かず離れずにうねります。迫力に飛んでいます。完璧な歌曲です。

*夜番(よばん)=夜警 *深更(しんこう)=夜更け

posted by 三上和伸 at 22:05| ブラームスの名曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする