ピアノ・エ・フォルテ(ピアノの古い名・フォルテピアノとも)が生まれて70数年、ピアノは進化し改良されて、チェンバロに代わって広く使われ出しました。モーツァルトも世に倣い、ピアノの曲を書くようになりました。演奏会用ではピアノ協奏曲を、家庭用では練習曲としてピアノソナタを作りました。分けてもピアノ協奏曲はモーツァルトの得意分野、主力はあくまでコンチェルトでしたが、ソナタにも素晴らしい曲があり、私は愛聴しています。
ピアノソナタ第1番は、1775年(19歳)の旅先のミュンヘンで書かれました。都合6曲(1番から6番まで)書かれており、その速筆ぶりが偲ばれます。モーツァルトによって6曲に纏められており、それはこれらのソナタには、デュルニッツ男爵と名乗る依頼者がいて、今日でも「デュルニッツ・ソナタ」の名で呼ばれることがあります。この当時、モーツァルトはハイドンに影響されており、ソナタ形式の習得を目指していました。何とこの第1ソナタは全3楽章を全てソナタ形式で書いています。ハイドンに比べれば、モーツァルトは歌の人であり、器楽曲に於いても旋律美が生命線ですが、それを犠牲にせず、美しい歌とソナタ形式を融合させています。枠組みの中で、天国的な歌の美しさを魅せています。
ピアノソナタ第1番ハ長調k.279
第1楽章 アレグロ ハ長調 4/4拍子 ソナタ形式
溌剌とした楽章、提示部ー繰り返しー展開部ー再現部ーコーダ、美しい歌(メロディー)を巧みに繋げて行きます。澱みの無い清流のような音楽です。
第2楽章 アンダンテ ヘ長調 3/4拍子 ソナタ形式
燦々と降り注ぐ陽光の下で聴くアンダンテです。やがて展開部に至ると翳りを持たせ、木漏れ日の中で憩います。直ぐに明るい再現部が現れ、陽・蔭・陽の対比が絶妙です。19歳の若者が書いたソナタ、驚くべきものです。
第3楽章 アレグロ ハ長調 2/4拍子 ソナタ形式
コロコロと饒舌に発展する音楽、一寸ユーモラスでコケティッシュなフィナーレです。気持ち良く酔わされます。爽快な気分が残ります。
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