2020年05月15日

ブラームスの名曲40 歌曲「ぼくのそばを流れ去った河」 Op.32-4

怒りと不満、そして絶望、音を楽しむ音楽としては有り難くない感情です。それでも真の芸術家はそれを遠ざけたりはしません。己に向き合って、己を理解して、それを克服していくのです。それを音楽を創る過程として、そして材料として、作品に結び付けて行くのです。プラーテンの詩に、ブラームスは心を寄せたのです。

「ぼくのそばを流れ去った河」 詩・アウグスト・プラーテン
ぼくのそばを流れ去った、あの河は
今どこにあるのか。
ぼくがその歌に耳を傾けた、あの鳥は
今どこにいるのか。
あの娘がその胸に飾っていたばらの花は
今どこにあるのか。
ぼくをうっとりとさせた、あの口づけは
今どこにあるのか。
ぼくがかつてそうだった、あの人間、
ぼくがとっくの昔に
別の自分と取り替えてしまった、あの人間は
今どこにいるのか。

薔薇色だった人生が何処で狂ったのか、一人追憶に浸って、後悔を募らせます。5回、嘗ての幸せの在り処が何処に消えたのか、その所在を疑り、叫んでいます。人生に躓いた男の絶望感が溢れます。どんなに泣き喚いても後の祭、もう一回やり直せるか?、それは男次第です。そうです、ブラームスはやり直せたのです。これはブラームスの勝利の歌です。
posted by 三上和伸 at 19:30| ブラームスの名曲 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする