あらすじB
武者修行中のペーターは銀の鍵を兜に懸け、身分がバレないようにし、トーナメントに出場した。見事に勝ち進み、皆の称賛を得る。されど謙虚に自らを名乗り出ることはしなかった。その姿に見惚れた王女マゲローネは宴席でペーターと話し、私を訪ねて欲しいと哀願した。マゲローネの美しさにぞっこんとなったペーターは、帰路の泉の畔で一人、マゲローネに恋い焦がれ、「これは悲しみなのか、喜びなのか」を歌う。
第3曲「これは悲しみなのか、喜びなのか」
わが胸を過ぎるもの、
それは悲しみなのか、喜びなのか。
昔の望みはみな消えて、
数知れぬ新たな花が咲き誇る。
涙にかすむ目で
遠い星空を仰ぐわが心の、
何とやるせなく焦がれることよ!
あの星に近づいていいものだろうか。
ああ、涙ははふり落ちて、
あたりは暗い。
わが希望の甦ることはなく、
未来の希望は失われた。
さあ、動きを求める心臓よ、鼓動せよ、
さあ、涙よ、はふり落ちよ。
ああ、喜びはさらに深い悲しみにすぎず、
人生は暗い墓場なのだ。
わたしは罪なくして耐えなければならないのか。
夢の中でわが想いのすべてがとまどうのは、
どういうわけだろう。
わたしにはもはや自分がわからない。
おお、わが声をきいてくれ、やさしい星たちよ、
おお、わが声をきいてくれ、緑の野よ、
愛よ、このおごそかな誓を聞け。
愛から遠ざかっているくらいなら、
いっそ死んでしまいたい。
ああ、愛の眼差しの光の中にこそ、
人生があり、希望があり、幸福があるものを!
美しい娘と出会ってしまいました。向こうは満更でもなさそうです。ここで真面目な男としては、「僕で好いんだろうか?」と切なくも否定的な思いが募るのです。それでも一生懸命考えれば、「僕こそこの娘に相応しい男だ!」と実感するようになります。苦悩と覚醒が織りなす素晴らしい男歌、この歌曲集の最初の傑作です。
ブラームス28歳の作品、Op.33マゲローネのロマンスの第1集の第3曲です。これで第1集の終了で、次回は第2集の第1曲です。
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