2008年06月06日

調律師の休日・自然通信

 六月に入り、今年は早くも梅雨入りが告げられて、ひと月余りの鬱陶しい雨の季節が始まりました。今、私の趣味である庭作りは雨に阻まれて中々はかどらず、気を揉む毎日が続いています。また私は最近腰を痛めて多少辛く、その作業が思うに任せず焦燥を覚えている今日この頃です。しかしそんな折、時の移ろいを感じさせるが如く、雨に応えて梅雨の花達が顔を出し、私を一生懸命に慰めてくれました。私は元気を取り戻し、再び心新たに農作業に取り組もうとしています。そしてこの蛍袋もその素敵な梅雨の花の中の一つであり、ほぼ毎年、梅雨入りと同時に咲き出します。その渋い味わいは野草の素晴らしさを際立たせており、風雅と称するに偽りはなく、私は愛して止む事はありません。
 今回は四年前に発行した自然通信27のホタルブクロの号を伝えます。
 
 自然通信27 庭に咲く蛍袋 横浜市自宅の庭 2004.06.05
ホタルブクロちゃん
写真は2008.06.06に撮影
 結婚して子供が生まれると、夫(父親)の生活は一変し子供を核としてその円周を回り始めます。妻を手伝い子供の世話をしてみれば、驚く事ばかりで興味深く、読み聞かせをすれば童話の世界にも誘われます。
父親も子供と共に新たな世界を学ぶ事になるのです。幼子を連れ野山を散歩すれば、時折美しい花に出会えて皆で名を言い合ったり図鑑で調べたりしましたが、その喜びが私を野の花に向けさせ、後には家族を差し置いて私一人がそれにのめり込む“羽目”?になりました。
 その当時、私はある雑木林の縁で蛍袋と出会いました。それは細い茎にふくよかな花をうつむき加減に付けており、何か物思いに沈んでいるような静かな姿でした。花の色は紫の混ざった渋い薄紅色で、微かな縞目と斑点が入り、自然の造形の巧みさや細やかさが見て取れました。決して色鮮やかではないけれど、心に触れてくる優しさが嬉しくて、私は一目でこの花の虜になりました。温もりがあるのに侘しい風情は他の花々には求める事のできない奥深い味わいがあり、極めて魅力的でした。
 蛍袋の虜となった私は、この花が頭から離れず側に置きたいと願い、愚かにも一株掘り取ってしまいました。案の定、不安は的中しこの草は数日で枯れてしまったのです。私は驚き、落胆し、胸に後悔の念が疼きました。本で調べた所に依ると、この花株は移植できず、側にある子株を移して来年に咲くであろう花を待つべきだったのです。この時から私は生き物を妄りに扱う事を慎み、命に付いて学び、大切に接する事を心掛けるようにしました。そして植物はタネから育てるのが最良であると思い至り、現在では多くの花々を実生から育てています。写真の蛍袋も当時の種蒔きから育ったものであり、もう十五年以上も咲き続け我が庭を彩ってくれています。鬱陶しい梅雨時には何故か個性的な美しい花が咲きます。雨に濡れた蛍袋は中々に趣があって美しいものです。
posted by 三上和伸 at 22:25| 自然通信 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする