昼間、雑記帳159で申していた横浜の伝統を担う老舗の料理屋とは、牛鍋元祖“太田なわのれん”でした。私達家族親族は、ここで我が妻の還暦祝いの膳を囲みました。Nちゃんまで参加して、和気藹藹と牛鍋を味わい、歓談を楽しみました。
*太田なわのれんの玄関、チャンと縄暖簾が架かっています

太田なわのれんは、明治元年(1868年)の創業。当時の横浜は西洋文化の影響を受け肉食が盛んになり始めました。それに乗ずるように太田なわのれん初代当主・高橋音吉は、牛肉を鉄鍋で調理する日本人に親しみ易い牛鍋を発案しました。それ以来、発展を遂げ、牛鍋元祖の商標を旗印に美味い牛鍋作りに奔走し、人々の期待に応えてきました。その大きな成果と言えば、2013年のミシュラン☆(ひとつ星)に選ばれた事でした。
*牛鍋元祖“太田なわのれん”のマスコットキャラクター・フクちゃん

漫画家・横山隆一のアニメキャラクタ−のフクちゃんがここのマスコットキャラクターとなっています。愛らしく牛鍋を焼いて(煮て)います。仄々としたいい絵ですね。
*先付
牛肉の一口にぎり寿し

先付とは突き出し・お通しなどとも呼ばれる小鉢ものです。本式の料理の前の味試しとして供されます。ここで牛肉のにぎり寿し、本格肉料理のプロローグ(序章)としては、心憎いものがありますね。客は益々期待を募らせますよね。太田なわのれん、やりますね。初めて観、味わいましたが、最前列は泡醬油なんですと、泡ですから優しい味わい、でも香りも塩気もちゃんとあります。そして二葉松葉で刺した甘カボチャに甘酢ショウガ、こちらは口直しですかね。
*お椀
冬瓜の牛すじスープ

これもまた驚くべき味覚の精…。冬瓜のさっぱり感を濃厚な牛すじが包み込んでハーモニーを醸す、歯触り、舌触り、旨味、どれもこれも絶品だ…。
*八寸
鱧の梅肉和え
芝海老・もろこしのかき揚げ
焼茄子の甚太和え
芋茎のおくら掛け

八寸とは何ぞや? お茶席を経験されている方々ならお解りと思われますが、我等素人にはチンプンカンプン。そこで調べてみました。八寸とは寸法で言えば、一寸(3.03sm)の八倍、つまり24.24cmで、因って昔、この凡そ24センチ四方の杉のへぎ板の角盆の事を、八寸と呼んだのです。これは昔の茶道の先生・千利休が八幡宮の神器からヒントを得た盆で、これに茶会の席の料理(酒の肴類)を盛る事にしたそうなのです。ですから、八寸とは、このへぎ板の盆を指しますが、同時にこれに乗せられる酒肴料理も八寸と呼ぶようになり、挙句にはその料理類の名称ともなったそうなのです。
左上:鱧の梅肉和え
鱧って不思議な感じ、この味覚、未だ私には理解(賞味)不能です。美味しいと思って食べた事がありません、今回もそうでした。これは料理が拙いのではなく、鱧事態に問題がありそう? 皆様美味しいですか?
左下:芝海老・もろこしのかき揚げ
これは私の好きな味、香ばしいの大好き。
右上:焼茄子の甚太(訛ってズンダ)和え
枝豆のズンダに焼茄子が香る、ジューシーでクリーミー。
右下:芋茎(ズイキ)のおくら掛け
これがまた逸品、歯触りは口では喩えようがなく、食べなきゃ判らないもの。食べてみてください。今月一杯ですが…
*鍋
ぶつ切り牛鍋
1、七輪の炭火に牛鍋を掛ける

いよいよ牛肉が登場です。肉は北海道産の黒毛和牛、牛鍋はすき焼きと違うので、味噌味です。味噌は江戸甘味噌をベースに他の味噌もブレンドし熟成させているとの事、香ばしいが甘い味噌でした。火が通り始めました。
2、牛肉と味噌を間引く

何やら仲居さんは肉と味噌を皿に取り始め間引きをしてます。聞けば、一回目を食べ終えたらもう一回並べ直して再度食べるのだそうです。テーブルには焼き豆腐と野菜の予備が並べてありました。
3、シラタキ投入

肉と味噌を間引いた隙間にシラタキを投入しています。
4、加熱

グツグツと煮えたぎっています。味噌も液体状になり溶岩のようにグツグツ、フフフフフフフフ、旨そうに煮えてきました。濃厚で香ばしい味噌の匂いが部屋に立ち込め始めました。フフフフフフフ、イイゾイイゾ!
5、春菊投入

一回目最後の投入品目はこの春菊、味噌色に緑が映え益々旨そう、ジュッと唾液が口中を滴ります。でも勝手に箸を伸ばしてはいけません。親切丁寧な仲居さんが、待てばそつなく取り分けてくれます。“慌てる◎◎は貰いが少ない”、何て事もなく、痒い所に手が届く、良いですね、一流の店は、プロの仲居さんがいる店は…。九人+Nちゃんで三基の七輪、三つのお鍋、それを三人の仲居さんで仕切ります。お疲れ様、ありがとう、質問攻めの五月蠅い客一人、失礼しました。
6小鉢に取り分ける

フフフ、小鉢が前へ、遂にぶつ切り肉を頬張る時がきました。「熱いですよ」と注意される寸前、もうお肉はお口の中、「オウ、ハフハフハフ……、ウー熱かった!、今度はフーフーしてから、ガボッ、ガツガツ、ムシャムシァ…、ウーン、旨い!」。江戸甘味噌の濃厚香味と黒毛和牛の脂が溶け合いリッチ(芳醇)な旨味、しかもそれだけでなく蛋白質の肉の繊維は噛めば噛むほど味が沁み出る…、「ウン、これが牛肉の旨さだ、♫止められない止まらない♫…」、薄切り肉の醤油味(すき焼き)も良いですが、ぶつ切り味噌味(牛鍋)も良いですね。食べ応えあり!
*食事
ご飯に味噌を付けて食べます。仲居さんが教えてくれました。私は二杯飯、まだまだイケそうでしたが、止めました。何か目線が怖い?
*水菓子

最後まで逸品で揃いました。白桃のゼリーの中に秘密のお宝が?。上には桃の実、間に抹茶、これが味にアクセント、そしてそして、底には滑らかな牛乳プリンが、牛のオンパレードで最後は牛のお乳で…。絶品に次ぐ絶品、美味しゅうございました。あっ、赤い実はスグリ(酸塊)だそうでうす。
*夏の牛鍋懐石・葉月特別献立 ¥8,400(税込)