あり得ない長さのプロローグ(序章)でしたが、大切な史実を包含した特別の対象ばかりでしたので、少し時間を掛けました。ここからは山下公園のモニュメント巡り、楽しい記念物ばかりが登場します。どうぞ気楽にお付き合いください。
ポーリン橋を渡り、いよいよ山下公園に入りました。普段は桜木町・開港広場の方面から入園する山下公園ですが、この日は反対側の元町寄りの東口から…。先ずは花のアーチを潜りその先で最初に見つけたのが、世界の広場。そこからは、水の階段を繋ぎとして水の流れに導かれ、最終の石のステージまで到達できます。世界の広場から水の階段に掛けては水路に多くの海洋生物のモザイクタイル画が施されています。可愛い海の生き物達のモニュメントを一つ一つ観て行きますので、どうぞ、ご一緒に…
1、世界の広場

写真左:奥から観た世界の広場、遠くみなとみらいが浮かぶ 写真中:羅針盤型の泉 写真右:対面から観た世界の広場、水路には海洋生物のオブジェが…
1988年に横浜博覧会が開かれるのに合わせて、それまで手付かずであった公園東側を整備する事にしたのだそうです。先ずは車で訪れる膨大な数のお客様のために巨大駐車場(1階部分、446台収納)を造り、その階上部一面に膨大な土を入れ広場にしました。その広場こそが現在の世界の広場で、あるコンセプトを掲げて広場中央に、モニュメントが造られました。それは港・横浜に相応しく、羅針盤を模った(かたどった)オブジェで、「横浜から世界の海に漕ぎ出そう」の冒険をイメージしているそうです。そしてその中央に設えた噴水から溢れ出る水が、途中の水の階段を下りながらそこに在る海洋生物のモニュメントを摺り抜け、、最下部の石のステージ前の池まで到達するように設計されています。
2、水の階段・海の生き物のモニュメント
広場内の段差を駆け降り、真一文字に石のステージまで直進する水の道・水の階段。その水路の中には次々とモザイクタイルの海洋生物が現れます。一つ一つ数えながら歩くのは、何か七つの海をミニ航海している風で、楽しめました。
@タツノオトシゴ(竜の落とし子)

最初に現れるのがこのタツノオトシゴ、そうとは見えませんが、これも魚なのですね。立ち姿で尻尾を藻に絡ませて、流されないように、自分の体を支えている姿を映像その他でよく見掛けます。ですから泳ぎは余り上手ではなく、確か胸鰭等を使っておっとりと立ったまま泳ぐようです。一番の特徴は繁殖にあります。何とメスがオスのお腹の中(育児嚢)に卵を産むそうで、オスは孵化するまで大切に卵を守ります。やがて孵化した稚魚はオスのお腹から出て来ます。大きさは20mm弱ですが、もう立派に親と同じ姿をしています。地方によっては安産のお守りになってます。
*水路はここから一段降下します。水の階段の階段たる所以の片鱗?が現れます。
Aシーラカンス
化石しか発見されず疾うに絶滅したとされていたシーラカンス。ところが1938年、南アフリカで生きて現存する事が発表され世界を騒然とさせました。とは言っても、私は未だ生まれていなかったのですが、その騒然の驚愕は充分に想像されます。何せ、私の生年の僅か12年前ですから、正に20世紀中盤の世紀の大発見だったのです。その姿形が魚類で初めて陸上に上がったとされる現存する生きた化石・肺魚に似ており、鰭が特徴的であり、今にも歩き出しそうな雰囲気を醸し出しています。そして何よりその名が素晴らしい、“シーラカンス”幻想性極まりない願っても無い飛び切りの名前でした。3億5000万年前から変化していない魚体を持つ新たな生きた化石・シーラカンス、このシーラカンスは遺伝子を変えずとも生きて行く事ができる、安定した環境で生活してきた一属だと言う事です。私も子供の頃から憧れていた存在でした。よく友人達と口角泡を飛ばして語り合ったものでした。
Bホラガイ(法螺貝)
日本最大の巻貝で、貝殻を楽器として用い、古今の修験道で使い、嘗ては戦国合戦の出陣の合図にも使われました。ブォオオオオオオ…とかプォオオオオオオ…という音が出、音の高低の変化も利くようです。現代でも法螺貝の演奏教室があるそうです。面白そー、でも横浜にあるのかしら? 今度聞いてみますね。
番外:雀の水浴び

人にとっても憩いの場である水の階段、それでもこの雀ほどにここを必要とする者?はいないでしょう。飲み水は勿論の事ですが、野鳥が生きる上で大切なのは水浴び(砂浴びも)、汚れ(脂粉)や寄生虫を処理するのに絶対必要なのです。この雀クン、私がいるのにお構いなくせっせと水を浴びていました。「誰がいてもやる事はやる!」とでも言ってるようで必死さが伝わってきました。「おー、イイジャンイイジャン(横浜弁)、使えばイイジャン、心置きなく…」。
Cアンコウ(鮟鱇)
このオブジェ、アンコウ特有の頭(背中上部)から延びる触手(擬餌状体)は付いて無かったのですが、このデカ口、間違いなくアンコウと思われます。深海に棲み、砂に埋もれ動かず、頭のヒラヒラを振っては餌と思わせ、寄って来た小魚をパクリ…。ホントに詐欺師紛いの騙しのテクニックに長けた嫌らしい魚なのです。でもその食用の様々な各部位の身は七つ道具と言われ秀逸、グルメ魚として有名です。私は今一なのですが、実は本物の優れた料理には未だ出会っていないのです。ですから本物に出会えたなら、認識は変わるかも知れません。何れ、大洗辺りに出向いて、本物を賞味したいと思っています。フフフ、その時はお知らせしますね。
Dマンボウ(翻車魚)
可愛くて滑稽で茫洋として、本当に魚?と疑ってしまいますが、フグの親戚の魚なのです。そう言えばその滑稽さがフグに似ています。鰭(ヒレ)の動かし方も似ているし…、目が可愛いし…、口も小さいし…。但し鰭の数はフグより少ないですね。おっとりとしてスローモーな動き、攻撃性からは程遠い善良な生き物、観ていてホントに安らぎます。食べ物もクラゲや動物プランクトン、動きの鈍い深海海老や深海烏賊など。動きの速い生き物は食べられません。また各地方の別称も多く、キナンボ(北海道)、ウキ・ウキキ・ウキギ(東北、浮き木)、マンザイラク(神奈川)、ウオノタユウ(瀬戸内、タユウとは親方の事)、シリキレ(鹿児島、尻が切れているから)、バラバ−・バーバラボー(大分、これは愉快)、カマブタ(静岡、フフフ、ウァハッハッ!)などなど。ついでに海外の名を紹介すると、月の魚(仏、伊、独、トルコ)、太陽の魚(米、インドネシア)、頭の魚(タヒチ)、泳ぐ頭(独)、もっとついでに、学名はモラモラ(ラテン語)、面白い!!!。
Eヒラメ(鮃・平目)

カレイを含め幼魚(体長数センチ)の頃のヒラメは、目が体の両側に付いていて、普通の魚と変わらないのだそうです。ところが、成長と共に片方の目が移動し、ある時、頭の頂点を乗り越え、一方の側に二つ並んでしまうのです。扁平な体の内、目がある方が上(褐色の体色)になり、目の無い方が下(白い体色)になります。「左ヒラメ、右カレイ」と言われますが、ヒラメの右目は左に移動し、カレイの左目は右に移動します。写真の魚絵は目が体の左側にあるのでヒラメと判ります。料理盛り付けの際、ヒラメは頭(目)を左に尾は右に、大変よろしい形をしています。反対のカレイは、残念ながら、盛り付けによろしくない魚です。味の差は別として、この盛り付けの善し悪しが高価さの違いになったとも言われています。カレイくん、残念でしたね。変態の左右の差で負けるなんてね、口惜しいでしょう、怒っているでしょう、プンプン…。但し、ヒラメカレイ、一族全部がそうではないそうで、左のカレイもいれば、右のヒラメもいるそうです。ヒラメとカレイの一番の見分け方は口と歯を見る事。ヒラメは口が裂け大きく歯もデカイ肉食系、カレイは口も歯も小さくおちょぼ口の草食系、これが決め手!
Fシャコ(蝦蛄)
ご存知、寿司ダネの逸品、でも最近のお寿司屋さん(回転寿司)では余り見掛けなくなりましたね。美味しかったのにどうしたのでしょうか。東京湾の金沢文庫柴港が高級なシャコの水揚げ港だったのですが? あの辺りの漁師さんは大丈夫なのでしょうか? 何ね、昔、あの辺りに仕事に行っていたものですからね、漁師さん家に…。今度、お寿司屋さんにでも行ったら聞いてみますね。
Gシャコガイ

サンゴ礁に棲む世界最大級(オオシャコガイが最大)の二枚貝。食べられるそうですが、私は食べた事がありません。沖縄に行けば食べられるのかしら? 何時か沖縄に行って食べてみたいですね、美ら海水族館にも行きたいし…。味は恐らくアサリを大味にしたような感じですかね。でもたっぷりと腹一杯、食傷するまで食べられそうです。
Hカニ?
可愛いオブジェですが、果たしてカニでしょうか? 少々デフォルメがキツイです。
I大階段と帆立貝

中々迫力のある風景です。このモニュメント群の中では最大の見物と言えます。水が心地よく流れています。爽快と同時に力感があります。いいですね、カッコよい!
Jホタテガイ(帆立貝)
殻を開き、殻の上蓋を立てると、丁度、帆掛け舟が帆を立てているように見えるから帆立貝、当然と言えば当然ですが、いいネーミングです。自然を一杯吸収して大きく太って美味しくなったような気がしてきます。貝の中でも屈指の美味を誇ります。生で食べても良し、干して食べても良い。殆ど貝柱を食べるものですが、紐も中々イケます。干し貝柱は、崎陽軒のシウマイの中にも入っているそうで…、あの濃厚な旨味の素は、帆立貝柱なのですね。トローリとしたりシコシコしたり、海の香りもふんだんで絶品、「アー食べたい!」
Kマッコウクジラ(抹香鯨)
かなりデフォルメされた作品、それでも何となくマッコウクジラと判断できます。オデコが大きいし、歯も立派、尻尾も可愛い?。マッコウクジラのマッコウ(抹香)とは、粉末状のお香を指す言葉です。この抹香のような香りの香料(竜涎香・りゅうぜんこう)がこのクジラの腸内から取れるので、こう呼ばれるに至りました。昔はこの鯨の糞が稀に海岸に流れ着き、そこに含まれる竜涎香を採取した人は、大儲けをしたと謂われています。特別高価な香り、何かロマンの香りが立ち昇りますね。私も海岸に住んで、毎日竜涎香を探し回ろうかしら…、仙人のように…、世捨て人のなりをして…。あっ、でも世捨て人は、そんな欲は掻かないんですよね?
Lトビウオ(飛び魚)

大型の魚や鳥や怪獣に追いかけ回されて、とうとうこの魚は翼を持つに至りました。一度に数百メートルは飛ぶそうで、小さな翼ながら凄い飛翔力ですね。翼は胸鰭(むなびれ)が巨大化したもので、トビウオの遺伝子は自らの一族郎党?の存続を掛けて進化を選んだのですね。私も一度でいいから船上の甲板で、彼らを眺めてみたい…。そして甲板に飛び込んで来たら捕まえて塩焼きにして食べてみたい…。きっと極上の味がするでしょう。だって、巨大魚や鳥、海豚や鯨が目の色を変えて追い掛け回すのですから…、美味しいに決まっています。じゃなきゃトビウオは翼など持つ訳ありませんものね。美味しく生まれた悲運、可哀想…
Mヒトデ(人手)

可愛い海の生き物・ヒトデ、これはどうしてもNちゃんと見たいですね。そして教えてあげるんだ…、「ほら、可愛いだろ…、これはヒトデって言うんだよ。人の手みたいだから人手て言うんだ。でも何だかお星様みたいだね…、そうかこれはお星様が海に落ちて空に帰れなくなっているんだ…、可哀想だね…、Nちゃん!」。
N最後の段段

最後の段段、もうこの先にオブジェはなく、大口開けた怪魚の滝と滝壺の池があるだけです。さあ水達よ一気に下りたまえ、爽快と言う快楽を楽しみながら…
O怪魚の滝と静寂の池

水の流れ、水の階段はここまで、とうとう終点に着きました。「ああー楽しかった、またね…」
P石のステージ

各種の催事が開かれています。石のステージ、一寸、踊ってみたくなりますよね? 是非皆様もどうぞ!