朝比奈切通 本来は朝夷奈(あさいな)切通 やぐら(窟) 滑川の源流 太刀洗水 十二所神社
横須賀線を大船で降りて神奈中バス金沢八景駅行きに乗り朝比奈へ…。直ぐに道標に従い朝比奈切通の細道へ入り、暫く民家の軒先を抜け森の中へ…。道祖神を見返りつつ坂を上ればやがて荒々しい鎌倉石の岸壁が現われました。これが朝比奈切通しです。深く削り取られた岩の狭間、正に異空間、時には切通しの崖面にはやぐらが…、鎌倉の昔人の人足の労苦が偲ばれました。頂上が横浜と鎌倉の境、そこからは滑川の水源となる沢水が滴り、やがて切通も終わり、太刀洗い水を見付けました。梶原景時が上総介広常を撃った際に、太刀にへばり付いた血を洗った伝説の鎌倉五銘水の一つ…。そして滑川沿いの平坦な道を行くと県道に出、そこには十二所神社が目前にありました。
丁度昼時になり、二人とも腹ペコ…。今回の食事処は二軒考えていました。一つが浄妙寺境内にある石窯ガーデンテラス、もう一つがこの創作蕎麦懐石料理の峰本朝比奈店でした。出発点が問題でした。鎌倉から順に巡れば昼時には石窯ガーデンテラス、朝比奈から巡ればこの峰本しか思い浮かびません。私達は当然乍ら峰本を選びました。私の天丼、これは普段食べている天丼とは異なもの…。タマネギ、卵も使われ、玉子とじ(親子丼)のような天丼…。ツユダクでそれなりの味、されど私は納得は出来ませんでした。それでも添えられていた蕎麦に茶碗蒸し・胡麻豆腐などの料理が美味しかったので、許しました。妻は蕎麦懐石、こちらはサクサクした海老天が…、天婦羅はこうで無くっちゃね。
大江稲荷神社
食事を終え暫く歩き明王院を目指していたところ、ふと路地の奥にこの鳥居が観えました。私達は空かさずこの鳥居の社を見つけ出そうと近付きました。由緒を辿れば頼朝の右腕であった嘗ての知将大江広元を祀った神社である事が判りました。広元はこの辺りに住まいを構えていたと言われます。ほんの小さなお稲荷様でも、古の大切な由緒があるものです。
五大堂明王院 八百善
思わぬ発見をした大江神社でしたが、本命としていた明王院は茅葺屋根の静かな寺でした。嘗て訪問したのですが、すっかり忘れていたその面影、それでも月日は私を成長させたようで、今の私には床しく観えた寺でした。五大堂明王院。五大とはインド哲学にルーツがある思想、地・水・火・風・空の五大であり、それが長い年月を経て大切な仏教思想に育まれたのだそうです。
八百善は入口は違えども明王院の境内に立地する料理屋です。創業享保二年の老舗で、今ではあまり知られていない江戸料理を出す店で、その江戸料理の粋を現代に伝えているとされています。料理は高価ですが、その内一度は…
浄妙寺 稲荷山 浄妙広利禅寺
鎌倉五山の第五位に位する臨済宗建長寺派の寺院。開基は足利義廉で最初は真言宗の極楽寺と称したそうです。後に禅宗の寺院となり、浄妙寺と改名しました。
今は蝋梅に代り梅の季節が到来しています。白梅に本堂屋根の白銅色が良く冴えています。美しい風景でした。
石窯ガーデンテラス テラスから浄明寺の町
浄妙寺の境内を上り詰めると、突然洋風建築が現れます。歴史漫歩をしている我々ですが、思わずズッコケてしまうのが」普通の人間の習いでしょう。でも庭(スコットランド・ガーデン)の造りが良く、直ぐに違和感は無くなりました。
石窯ガーデンテラスのハーブティーとプリン
オヤツに立ち寄りました。質素な旅を心掛けてはいますが、一寸した贅沢も好いものです。徒歩の旅で火照った体を覚ますには好いガーデンテラスでした。ハーブティーの鋭利な香り、プリンのふくよかな風味、甘味が心を解しました。
報国寺本堂 孟宗竹の庭・竹寺
功臣山報国寺、臨済宗建長寺派の禅宗のお寺です。寺の格は比較的低く、五山・十刹の下の諸山となっています。本尊は釈迦三尊です。六浦路の寺の中では最も人気があるのがこの報国寺です。その手入れの良さは、京都の寺と遜色がありません。本当によく手入れがされています。何よりも美しいのが竹の庭で、艶々とした瑞々しい孟宗竹が繁茂しています。その竹の小路を歩けば、清々しい気分にさせてくれます。
苔生した参道のきざはし 幟乱立の茅葺の本堂
杉本寺は天台宗のお寺で、開山は行基と伝えられています。大蔵山 杉本寺、別称が杉本観音。その名の通り本尊の仏として三体の十一面観音像が祀られており、中央と向かって右の十一面観音像が国の重要文化財です。この寺の特徴は、この重文の仏を間近で観る事(拝む事)が出来る事で、その磊落さ故、気持ちの良い貴重なお寺です。
仁王像 阿吽(あうん)の呼吸の内、左が吽の仁王、右が阿の仁王。口が閉じているのが吽の仁王、口が開いているのが阿の仁王、それで見分けます。
愈々本日の大本命杉本寺です。鎌倉最古の寺で、天平の創建と聞きます。茅葺の仁王門と本堂を持ち、仁王門から本堂に至る参道は苔生した鎌倉石の階段で、丸く削れたその減り加減が時の悠久を感じさせ、極めて乙でした。坂東三十三観音の一番の札所です。
梅の荏柄天神
美しい紅梅が咲き始めた荏柄天神、丁度受験シーズンで、訪れる参拝者は若い人が多かったですね。どうか天神様のご利益がありますように…。
紅梅を楽しみ、一息ついて、棒になった足を引きずり鎌倉駅に辿り着きました。新春の鎌倉漫歩は終わりました。