
ススキ(薄・芒)別名:カヤ(茅)・オバナ(尾花)・袖振草 イネ科ススキ属
日本全土何処にもでもあり、見慣れた草なので枯れ芒などと呼ばれ雑草として半ば嫌われていたと思われます。しかし近年は箱根などの茅場の保護も手伝い、また人の目も肥え、その風情が愛されるようになりました。勿論、私もその愛する人間の一人であり、細い葉の美しい糸薄を庭に植えて楽しんでもいます。
薄の葉の縁は鋸の刃のように鋭く、昔の向う見ずの子供は草原を駆け回ってはこの薄の葉で手や足に切り傷を作りました。深くは切れませんが、血が滲んで痛いものです。私も子供時代に切りました。その節のその痛さと思わぬ不思議に大層驚いたのを記憶しています。
そんな危険な草であるために昔から魔除けの飾りとして使われてきました。十五夜のお月見の晩には供え物と一緒に必ずこの草が捧げられました。それは正しく家内安全を祈願する慣わしの行事、悪しき者に対する魔除けの意味がありました。
カヤ(茅)はカリヤネ(仮屋根)が転訛した語、仮屋根とは耐久性のない間に合わせの屋根の事、瓦や桧皮葺の本屋根とは違う粗末な屋根の事。この間に合わせの屋根に用いたのが薄などの草草でした。因って、何時の日にか使われた薄などの草を茅と呼ぶようになったのです。
尾花は秋の七草の一つとされています。ここでは薄ではなくオバナなのですね。言わずと知れた尾花は尾のような花、正に名は体を表すですね。でもその音は素敵ですよね。日本文化の音がします。
袖振草(ソデフリグサ)も名は体を表すの理から想像が出来ます。葉の一つか二つが風でヒラヒラヒラヒラと翻っている様を観た事はありませんか? 私はよく見掛けます。まるで袖をヒラヒラさせてるように観えます。正しく袖振草です。但し、この現象はアヤメ類などにも観られます。
最後にススキの謂れはスクスク立つ木だそうで、その成長の速さを例えたもののようです。スカッとして良い名ですね。
このように薄は話題に欠く事はありません。如何に薄が人の傍にあったのか、人に役立っていたのかが良く分かります。徒や疎かには出来ない素敵で大切な草だったのですね。